財産分与を考えたいのに、相手が財産を開示しない、どこの銀行に預金があるか分からないという相談は珍しくありません。重要なのは、裁判所がすべての財産を自動的に探してくれると考えるのではなく、存在の手掛かりを具体化することです。
もっとも、無限定な「財産探し」の制度ではありません。何を確認する必要があるかを整理して手続を使います。
1 まず分かっている財産を一覧にする
相手の財産が全部分からない場合でも、分かっているものと不明なものを分けます。
- 給与振込先として使っていた銀行
- 住宅ローンを利用している金融機関
- 証券会社から届いた郵便物
- 生命保険料控除証明書に記載された保険会社
- 配当金・株主関係の郵便物
- 不動産
- 勤務先の退職金制度
2 家計の動きから手掛かりを探す
既に適法に確認できる通帳や家計資料に、別の銀行・証券会社への定期的な送金がないかを確認します。給与明細や確定申告書、税務資料から財産の存在が推測できる場合もあります。
3 「全部の銀行を調べてほしい」だけでは難しい
財産分与では、相手方の財産を探索すること自体が目的ではありません。どの財産が存在すると考えるのか、その理由は何か、財産分与の判断に必要な情報は何かを具体化する必要があります。
4 家庭裁判所の情報開示命令
2026年4月から、財産分与等の裁判手続において、家庭裁判所が必要と認める場合に、当事者に対して自己の財産に関する情報の開示を命じる制度が設けられています。
この制度があるからといって事前の整理が不要になるわけではありません。既に判明している財産、なお不明な財産、相手の説明と客観資料の食い違いを整理しておくことが重要です。
5 取引履歴は必要な期間を絞る
基準日の残高が分かれば足りる財産もあれば、基準日前に大きな出金があるため履歴を確認する必要がある財産もあります。何年分もの全履歴を漫然と求めるのではなく、確認したい事項に対応する期間を考えます。
6 財産分与の「財産開示」と、強制執行の「財産開示手続」は別です
財産分与の内容を決めるための家庭裁判所での情報開示と、既に確定した金銭債権を回収するため地方裁判所で行う民事執行法上の財産開示手続は、目的も手続も異なります。
養育費・婚姻費用などが決まった後に支払われない場合には、後者の財産開示手続や第三者からの情報取得手続が問題になることがあります。
- 確実に存在する財産
- 存在すると考える財産
- そう考える根拠
- 相手から開示された資料
- 不足している情報
- 基準日前後の不自然な資金移動
手掛かりを一覧化し、任意開示、資料提出、情報開示命令等のどの方法が必要かを検討します。